皆さんは総合診療という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
馴染みの無い言葉かもしれませんが、医学の歩みをひもときながら、総合診療の必要性を交え、総合診療とは何かをお伝えしたいと思います。
近年、医学の急速な発達とともに、高度な先進医療の分野も発展してきました。
その結果、先進医療を扱う専門性の高い医師が増加することになります。
医療分野が細分化され、各専門医が増加に伴い、高度な医療の提供が可能なとなりました。
その結果、これまで立ち向かうことができなかった病気に対しての対応も可能となり、世界でもトップレベルの医療水準に達し、長寿大国と言われる現実に大きく寄与しています。
一方で、専門性の高さを追究することで、多くの分野に分かれたたくさんの疾患・症状を診るという視点に弱くなってしまいます。
特に高齢者ではひとつの病気だけをお持ちの方は少なく、たくさんの持病や、それに対する治療薬が相互に作用して、様々な症状を引き起こします。
そのため、多分野に分かれた様々な疾患・症状をしっかり診ていくということは患者さんにとっての負担を軽減し、正しい診断と治療を導きます。
また、患者さんが自分の病気にどのような想いを抱いているのか、どんな家族がいてその家族がどのような想いなのか、などの心理的・社会的な背景を考慮することで、より良い医療が提供できます。
そのように、幅広い知識と広い視点で患者さんを診療し、患者さんの背景も考え、その患者さんにとって本当に良いことは何かを追求する医療を実践することが総合診療の役割です。
総合診療医は、ときに診断に難渋する疾患を正確に診断したり、たくさんの疾患を持つ患者さんのかかりつけ医になったり、過剰に飲み過ぎている薬を調整したり、家族と患者さんの橋渡し役になったりと、いろいろな役割を担いながら日々診療を行っています。