10月の1か月間、阪神野田駅前ファミリークリニックにて地域医療に関する研修をさせて頂きました。
在宅医療では、日常的な診察から急変時対応、看取りといった種々の場面に則してケアを行うことが必要とされています。厚生労働省によると、在宅医療の定義は「高齢になっても、病気や障害の有無にかかわらず、住み慣れた地域で自分らしい生活を続けられるよう、入院医療や外来医療、介護、福祉サービスと相互に補完しながら、患者の日常生活を支える医療であり、地域包括ケアシステムの不可欠な構成要素である」とされています。これからはこの定義に沿って研修で学んだことをこの定義にお話しようと思います。
まずは「高齢になっても」という部分についてです。在宅医療ではあらゆる疾患や年代が対象となります。研修時には疾患は癌や脳機能障害から精神疾患まで、年齢は10代から90代まで幅広い方々に訪問医療を行いました。それぞれの患者さんについて疾患のことや心理的側面まで、必要とされるケアや注意を払うべきことが大きく異なると感じました。
次は「病気や障害の有無にかかわらず」の部分についてです。在宅医療では2週や1か月に1回の頻度で定期的に訪問診療を行います。それにより病状だけでなく、生活環境や家族の存在など患者さんの周囲の環境も観察することができ、本人の生活に合わせた予防医療を行うことができます。クリニックでの取り組みとしては、外来では生活習慣病アプリを用いて無理のない範囲から個々の食生活・飲酒量を管理することで生活習慣病を予防する、姿勢保持困難な方の訪問診療で自宅環境を確認、適切な手すりの選定を検討するなど、一人ひとりに合わせた疾患増悪予防を行っていることを実感できました。また疾患罹患予防としてインフルエンザやコロナ、帯状疱疹のワクチン接種も積極的に行っておりました。
次は「住み慣れた地域で自分らしい生活を続けられる」についてです。日本財団『人生の最期の迎え方に関する全国調査』によると、67歳~81歳の方(当事者)と35歳~59歳の高齢の親を持つ方(子世代)を対象に人生の最後をどこで迎えたいかのアンケートを行っており、最多回答は自宅で58.8%が望んでいます。一方で実際に最後を迎える場所は、医療機関が最多で67.4%、自宅は17.2%にとどまっております。厚生労働省はこれを踏まえ、自宅で最期を迎えたいという国民の希望を叶えるのは喫緊の課題としています。自宅での看取りには在宅診療が不可欠ですが、訪問診療を行っている医療機関の割合は全体で28%程度であり、在宅医療・介護の推進を国が推奨している現状があります。
最後に「入院医療や外来医療、介護、福祉サービスと相互に補完しながら」についてです。
看護師や理学療法士をはじめとした数多くの職種とのチーム医療が重要であると感じました。訪問で看護やリハビリテーションも研修させていただき、在宅医療では患者さん、家族の意思を尊重した形での医療を提供しておりました。
今回の研修で、在宅医療は患者さん本人の希望や生活に寄り添った心の通った優しい医療だと感じました。衣畑先生はじめクリニックの皆さんのように、私も心優しく穏やかに、患者さんや一緒に働いている方たちと過ごすことが出来る医師になれるよう、ここでの経験を活かしていきたいと思います。1か月間本当にありがとうございました。